順子(1)
私、田村順子は、1941年東京の巣鴨に生まれました。
信州の田舎に疎開中父が亡くなり、酷いいじめを受けたために、姉と共に池袋千早町の叔母の家に預けられたのです。
高校生でOLになった姉と一緒に中野区のアパート暮らしを始めました。
ちょっと不良していた17歳の時、モデルのスカウトを受け銀座へ行ったんだけど…。
相手に会えず、帰りのお金もなくて途方に暮れていた時に、電車賃を貸してくださったのが、森崎達也さん。
大手家電メーカーの社長さんだったんです。
彼の紹介で、モデルの仕事をし、セレブの生活を堪能させて貰いました。
そして卒業後、銀座の伝説になった『妃』のママ・洋子さんのもとでホステスに…。
『妃』三羽烏の貴子、ふみえ、樹里さん達は優しかったんだけど、年の近い加奈ちゃんは私に敵愾心を抱いてました。
森崎さんのことを打ち明けて、了承して貰った私は、母と一緒に暮らすことに…。
ホステスとして順調に伸びていた時、大学時代から銀座で遊んでいる小滝産業の二代目・栄一さんと知り合いました。
森崎さんには援助を断り、これからは愛人じゃなくて恋人として付き合っていこうと約束したんです。
栄一さんとは若いだけに楽しい付き合いを続け、とうとうヨットの上で抱かれてしまいました。
私は森崎さんとの間で悩み、揺れる女心を持てあましていたのですが、その時、栄一さんの愛人だと名乗る女性が…。
その女は『トパーズ』のホステス・愛子さんでした。
栄一さんの子供を堕したこともあるそうです。
私は栄一さんを呼び出すと、きっぱりと別れることを告げました。
するとその後、愛子さんが栄一さんを刺したというニュースが! 刺された栄一さんは、半身不随になってしまいました。
また安さが売り物の店『R』が開店し、『妃』に色々嫌がらせをやってきたのですが、貴子さんがオーナーを誘惑して、ベッド・シーンを写真に撮らせて止めさせるといったこともありました。
『R』は結局、採算がとれなくなって閉店しています。
店の経営の難しさを痛感した私に、高崎さんは銀座で30年店を出し続けられれば『女帝』になれるよって…。
加奈ちゃんが、スポンサーを得て独立していきました。
樹里さんが麻薬でショック死し、貴子さんまで男問題で自殺してしまったのには、ママも私も大号泣。
女が一人生きてくって、大変なんです。
私もとうとう森崎さんに資金をお借りして、クラブ『順子』を開店することに。
洋子ママは、『妃』の卒業証書を下さり、店長の矢島さんを付けてくれたんです。
その後私は、頼りになる片腕・奈々ちゃんを手に入れました。
私の店が大繁盛したためにさびれ始めた『エンジェル』のママが、お酒勝負を仕掛けてきましたが、酔っぱらって和解。
他店との共存を学んだ私は、『エンジェル』と共に数寄屋通りの繁栄を支えてきているのです。
店で弾き語りをしてくれているケンちゃん。
レコード歌手としては売れなかったけど、クラブ『順子』に欠かせない一人です。
奈々ちゃんが左腕なら、ケンちゃんは右腕。
繁盛しすぎて目を付けられ、税務署の調査が入ったことも、いい教訓になりました。
そして新進気鋭の小説家であり、作詞も手がける異才の人・喜多嶋玲との恋は、私のとって最大の試練に…。
相談した洋子ママに反対され、結局恋に恋していたことを自覚したんです。
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