失われた永遠
テッサは、かつて誘拐事件に巻き込まれて記憶を失い、顔を整形したうえに大富豪の娘として育てられた。
それから十七年がたったとき、十六歳になったテッサの愛娘が突然家出をするという事件が起きる。
調査会社ダンディー・エージェンシーに捜査を依頼し、派遣されてきた調査員ダンテをひと目見てテッサははっとした。
なぜだかわからないけれど、彼のことを前から知っている気がする。
そして、自分でも覚えのない熱い気持ちが込み上げるけれど……。
だが茫然と彼を見つめるテッサは知るよしもなかった――ダンテも彼女と同じ思いにとらわれていることを。
ヘレンにとって、デリアは十代のころからの大事な親友で、彼女の頼みを拒むことなどできなかった。
この三年半、ヘレンはデリアが密かに産んだニコラスの面倒を見ている。
デリアからは定期的に連絡が入っていたが、六週間ほど音沙汰がない。
心配していた矢先、デリアの訃報がもたらされた。
ヘレンは母を失ったニコラスが不憫でならず、デリアの兄レオンにもちかけられた結婚に同意した。
彼も妹の遺児の幸せを第一に考え、二人で育てようと言ったのだし、結婚は便宜的なものだと信じていた。
しかしほどなく、ヘレンは自分の見通しが甘かったのを思い知らされる。
豪奢なホテルで催された華やかなパーティに、リセインは恋人のザックとともに出席した。
ザックは敏腕法廷弁護士で、力強いオーラを放つ大富豪。
リセインは彼と一緒にいるだけで身も心も満たされる。
だが、彼を狙って近づいてくる女性は数知れない。
その夜も黒髪の美女アレグラが、あからさまに誘いをかけていた。
こんな場面に遭遇するたびに、リセインの心はざわつく。
わたしとザックは恋人。
でも彼は結婚について触れもしない……。
半月後、リセインはザックの子を身ごもったことに気づく。
同じ日、ザックとアレグラの婚約を報じる記事が新聞に載った。
リジーと違って、妹は人目を引きつける美貌の持ち主だったが、玉突き事故に巻き込まれ、脳死状態に陥ってしまう。
驚いたことに妹は妊娠していて、男児を出産後、この世を去った。
子供の父親が誰なのか皆目わからないまま四年が過ぎ、今では遺児ベンはリジーの生きがいだった。
そんなある日、リジーは公国のプリンス・エンリコの訪問を受ける。
なんと、ベンは公国を治める大公の孫だという。
ベンを大公家に引き取るという申し出をリジーが突っぱねると、エンリコはとんでもない代案を示した。
「ぼくと結婚して、ベンと一緒に公国に移り住んでくれ」外交官の娘、ソレルは中東の国ハラスタンで育てられた。
両親が早世したあとも、故国イギリスには戻らず、シークの補佐官マリクを後見人として、王宮で暮らしてきた。
マリクのもとで過ごすうち、彼への尊敬の念は恋へと変わった。
ところが、マリクはソレルを妹のようにしか思っていない。
マリクが私の気持ちに応えてくれることは決してないだろう。
苦しさに耐えかねたソレルは帰国する決意を固めた。
自由な国で人並みに恋もしたいとマリクに言うと、彼はまるで嫉妬に駆られたように、憤然と切り返した。
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